2022.08.04
【定期航空協会】航空脱炭素におけるGPU使用について
「飛行機のアイドリングストップ」でカーボンニュートラル
もちろん、「アイドリングストップ」といっても飛行機のジェットエンジンを止めてグライダーのように滑空することではありません。一言でいうと、空港においては電気や冷暖房を機体へ供給する動力源として、航空燃料を使う補助動力装置(APU=Auxiliary Power Unit)の利用を極力少なくする一方で、通常の電力を使う地上動力設備(GPU=Ground Power Unit)を最大限に活用しようというものです。「自動車のアイドリングストップ」が駐停車中や信号待ちなどの間にこまめにエンジンを止めることで燃料を節約し、CO2の排出を少なくすることに大きな効果があるのと同様、「飛行機のアイドリングストップ」も空港でのCO2排出抑制に大きな効果が期待されています。
空港への着陸後、一瞬機内の照明が落ち、その後すぐに回復する現象が起こることがあります。これは機内の電源供給源がメインエンジンから機体後部に装着されているAPUにいったん切り替えられるために見られるものですが、スポットイン後、空港ではAPUからさらにGPUを積極的に活用することになります。
空港で出発便の搭乗開始を待つ間、少し視線を外に移すと、多くのスタッフと街中では目にすることのない珍しい車がせわしくなく動いている中で、スポットから飛行機に唐突につながっているケーブルと銀色に光る大きなホースに気づきませんか?実はケーブルは飛行機専用の電気ケーブル、そして巨大なホースは飛行機に冷気・暖気を送り込むためのもので、家庭用エアコンの100台分の威力があります。これらの動力を供給するものこそがGPUなのです。
大きな空港では、「固定式」のGPUが多いのですが、小規模な空港では車両に設備を搭載した「移動式」も見られます。そもそも航空燃料を使うAPUはコストが高いだけではなく、大きな騒音と大量の排気ガスを排出し、地球環境に優しくありません。一方、GPUは電力会社経由の電気を動力源としているため、APUに比べCO2の排出や騒音をかなり軽減できる優れものです。例えば、APU使用時間を10分間短縮しGPUに置き換えるだけで、B777型機では約50リットル(小型自動車1台の満タン分)の燃料削減と、約126kgのCO2排出量削減につながっています。GPUの動力源は基本的には電力会社の電気ですが、空港によっては太陽光発電など再生可能エネルギー由来の電気の割合を増やそうという動きもあります。また空港で使われている車両の電動化や燃料電池化も同時に検討されています。
固定式GPU
〈埋め込み式ケーブル 電力供給〉 〈埋め込み式ホース 冷暖房供給〉
移動式GPU
〈移動式 電力供給〉 〈移動式 冷暖房供給〉
飛行機から降りる際に客室乗務員から、ご賛同いただけるお客様には窓の日よけを下ろすようお願いされることがあります。実はこれは機内の温度上昇を抑えることでAPUの使用時間を減らすことにもつながっています。空港での一人ひとりの小さな取り組みの積み重ねが地球温暖化抑止の一助になっているのです。
添付ファイル:航空脱炭素におけるGPU使用について